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全学科 "こころ"と"からだ"を癒す統合医療の知識と技を習得した「元気な医療人」になろう。

2010/09/03(金)

鍼灸の魅力

保健医療学部鍼灸学科 谷 万喜子

 こんにちは。
 突然ですが、みなさんは鍼灸治療を受けたことがありますか?「鍼灸の魅力」を感じてもらうには、実際に体験してもらうのが一番良いと思いますが、今日は私が感じる鍼灸の魅力をお話しましょう。
 さて、鍼灸治療の対象となる症状にはどのようなものがあるでしょうか。おそらくすぐに思い浮かぶのは、肩こり、腰痛、それからスポーツ障害による痛み、などでしょう。もちろんそれらは鍼灸治療が適応する代表的な症状です。では、その他には?最近では、美容の領域での鍼灸治療も注目されています。しかしながら、特にお伝えしたいのは、補完医療として、医療の中で活かすことができる鍼灸治療についてです。
 私事で恐縮ですが、お話したいと思います。
 私は、数年前に父を癌で亡くしました。腎臓に癌が見つかって手術をしましたが、その時すでに骨盤に癌が転移していて、残念ながら診断されてから半年あまりで亡くなってしまいました。その短い闘病期間に、特に父が辛そうにしていたのは骨盤に転移した癌による激しい腰の痛みでした。私が鍼治療をしましたが、治療直後は楽になるものの、翌日になるとまた激しく痛むようでした。私の治療がだめなのか、とたいへん落ち込みました。そして、癌の痛みって本当に手強いものだ、と改めて感じていました。放射線治療が始まりましたが、痛みは治まりません。さらに、全身状態が悪くなっていよいよ入院、痛みのコントロールにモルヒネが使われることになりました。しかしながら、モルヒネの副作用で激しい眠気が起こり、意識が朦朧とした状態になってしまいました。父は、痛みよりも、この眠気で自分がはっきりしていないことがとても嫌で、結局モルヒネを中止することになりました。本人も私たち家族も、まだまだ病気と闘っていこうと考えていたのですが、その時すでに余命1週間と言われていました。そこで、少しでも家族一緒にいようと考えて父を自宅に連れて帰ることにしました。自宅に戻ったら、痛みのコントロールのため私の鍼治療再開です。かなり体力が弱っていましたので、刺さない鍼"鍉鍼(ていしん)"を使うことにしました。すると今度は、父は「この鍼は気持ちいいな」、「楽になるわ」と言ってくれ、それまであまり私の鍼治療を信用していなかった母も、「あんたがいてよかったわ。家族にあんたみたいな仕事してる人がいてない患者さんはどうしてはるんやろね。」と言ってくれました。そして自宅に帰って5日目の朝に父は亡くなったのですが、最後は苦しむことなく、亡くなる前夜まで車椅子から立ち上がる練習をして、父らしく希望を持って過ごしてくれました。
 私自身は鍼灸っていいな、鍼灸師になって良かったと常々思っているのですが、「治未病」、すなわち、まだ病んでいない状態を治療することができるはずの鍼灸治療で、父を助けることが出来れば一番良かったのですが、それが出来なかったということは私が鍼灸師として未熟だったということでとても悔しい思いをしたとともに、やっぱり鍼灸師で良かった、とも思うことができました。
 現在、このような癌に対する緩和ケアに鍼灸治療を使うことが、どんどん広がってきていて、その効果もたくさん報告されています。私自身は、鍼灸師というより癌患者の家族として、もがきながら対応して、充分な成果を得られたかというと難しいところですが、医学的治療で得られる効果があれば、その隙間に鍼灸治療を使っていくことで、よりよい医療の形を作ることができると思います。鍼灸の効果には、わかっているところ、まだわかっていないところどちらもありますが、私たち鍼灸師とこれから鍼灸師を目指すみなさんとの努力でそれを少しずつ明らかにすることが、さらに「鍼灸の魅力」を増していくことになると思います。そのために、一緒にがんばれる人が増えていくといいな、と思っています。

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